『スタンフォード式 最高の睡眠』書評&実践レポ

スタンフォード式_アイキャッチ

僕は以前このブログで4時間半熟睡法というものを紹介した。

過去10ヶ月間に渡って続け十分な効果を実感できていたが、最近「スタンフォード式 最高の睡眠」という本が話題になっている。

4時間半睡眠法に不満はないものの、このスタンフォード式の睡眠というものにも正直興味がある。

というわけで、実際にこの本を購入し、試しにここ1ヶ月ほどスタンフォード式睡眠に切り替えてみた。

今回はこのスタンフォード式睡眠についての紹介と実践レポの結果をまとめてみる。

この本に興味がある人もない人も是非読んでみてね。

スタンフォード式 最高の睡眠とは?

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そもそも「スタンフォード式 最高の睡眠」とは、西野精治氏による同名の本にまとめられている睡眠メソッドのことだ。

西野氏は睡眠研究の総本山であるスタンフォード大学の睡眠生体リズム研究所(SCNラボ)所長であり、医学博士の肩書もあるなんかすごそうな人だ。

「睡眠メソッド」と言われても何がなんだか分かり辛いが、要は『睡眠の質』を最重要視し『最高の睡眠』を得るためにはどうすればよいか?を具体的に整理したものだ。

したがって、4時間半という短眠法を起点としている『4時間半熟睡法』とはアプローチが異なる。

ポイントは以下のとおり。

  1. 睡眠が持つ役割と重要性

  2. もっとも重要な『黄金の90分』の法則

  3. 最高の睡眠を生む「体温のスイッチ」

  4. 入眠をパターン化する「脳のスイッチ」

  5. 睡眠レベルを高めるための「覚醒戦略」

まず睡眠の役割を明らかにした上で、最高の睡眠を得るための具体的な手順を2~5で述べている。

では1つずつ説明していこう。

ポイント1 睡眠が持つ役割と重要性

はじめにこの本では睡眠の役割について整理している。

曰く、眠りには以下の5つの重要なミッションがある。

  1. 脳と体を休息させる。

  2. 記憶を整理し定着させる。

  3. ホルモンバランスを調整する。

  4. 免疫力を上げる。

  5. 脳の老廃物を除去する。

これらの5つのミッションはそれぞれ関連しあっている。

まず1の『休息』が最もわかりやすいし、イメージもしやすいはずだ。

睡眠中は副交感神経が優位になることでα波が出現しストレスを減らしてくれる。

また、脳は脳脊髄液という液体に浸かっているのだが、日中の神経活動によってこの液体に老廃物が溜まる。

睡眠時にはこの老廃物の除去も行われ、これもまた脳へのダメージを減らすために重要だ。

ホルモンバランスや免疫力が病気や怪我への抵抗力や回復に大きく貢献することも周知の事実だし『寝ている間にその日の記憶を整理する。そのために夢を見ている』というのも有名な話だ。

僕は脳科学の本についても読んだことがあるが、記憶の定着に睡眠は重要な意味を持つ。

一生懸命勉強しても睡眠の質が不十分なら記憶に定着しないのだ。


一方、この本では眠らないことによる悪影響についても触れている。

眠りのミッションをみれば想像がつくと思うが十分な睡眠を取れない状況が続いた場合の悪影響はものすごい。

ホルモンバランスの悪化や抵抗力の低下、自律神経の乱れを引き起こし「肥満」「高血圧」「糖尿病」「精神不安定」「認知症」といった悪影響がずらりと並んでいる。

中でも『短眠者は短命である』という衝撃的な内容も含まれている。(睡眠以外にも複雑な要素で決まるという断りも入れているが)

そしてこの睡眠不足は負債となって貯まり続け、借金のように体を蝕むという記載もある。

それは1日大量に寝だめしただけでは到底返すことができない、とも。

実に恐ろしい。

ポイント2 もっとも重要な『黄金の90分』の法則

ココからは具体的な睡眠の質を上げるためのノウハウを紹介する。

睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があることは聞いたことがあると思うが、脳の休息にはより深い眠りであるノンレム睡眠が重要になる。

とりわけ、入眠直後の90分間は特に深いノンレム睡眠に入る。

そしてこの90分間こそが非常に重要な意味を持つ。

  • 睡眠欲求を「睡眠圧」というが、この睡眠圧の開放が最初の90分間で最も強くなる。

  • この90分間に成長ホルモンが最も多く分泌される。その割合は一晩の内のなんと約80%(!)である。

  • 実験において最初の90分間の睡眠を阻害すると、その後の睡眠はもはや計測不能になるほど乱れる。

  • この90分間に自律神経と脳のコンディションの調整が行われる。

どうだろうか。

これらの内容を見ればいかに最初の90分が重要か、なんとなくでも想像出来ると思う。

特に1つ目2つ目の影響はみるからに重要度が高い。

逆に言えば最初の90分さえしっかりと質のよい眠りが得られれば、その後の眠りもよいものになる。

仮にどうしても徹夜しなきゃならない場合でも、とりあえず最低限黄金の90分だけ確保できれば「最低条件下での最大限のメリット」を得られたことになる。

この黄金の90分を手に入れる方法は実にわかりやすい。

毎日同じ時間に寝て同じ時間に起きる。眠るのは23時頃が理想。これだけだ。

先程の徹夜の話を例にすると、徹夜しなければならない日であっても普段通りの時間にまず寝る。

そして黄金の90分だけ休んだ後に起きて、そこから徹夜すればよいということだ。

多くの場合、徹夜となったらとりあえずギリギリまで作業して朝方時間が残っていたら仮眠をとるというやり方のはずだ。

しかし、これでは黄金の90分は決して得られないことになる。

これは目からウロコの事実ではないだろうか。まさに逆転の発想だ。


では普段から黄金の90分、ひいては最高の睡眠を得るためにはどうすればよいか。

「毎日決まった時間に寝て起きればよい」というが、その眠りの為にやるべきことは何か?

その具体的な手段を以降のポイント3とポイント4で説明する。

ポイント3 最高の睡眠を生む「体温のスイッチ」

まずは1つ目の体温のスイッチだ。

眠りに入る前に体温が下がるというメカニズムについては4時間半熟睡法でも触れられていた。

この本ではさらにより踏み込んで説明している。

実は体温には皮膚の表面の「皮膚温度」と体の内部の「深部体温」の2種類がある。

皮膚温度は日中低くて夜高くなる。

一方、深部体温は逆で日中高くて夜は低くなる。

『寝る前に手足が熱くなる』『寝るときは体温が下がる』というのは正確に言うと皮膚温度が上がって放熱し、深部体温を下げる働きを指している。

このことから、よい睡眠にはこのような体温の変化が必須だし、逆に体温を正しくコントロールしてよい睡眠に近づけることもできる。

その為のスイッチというのが「入浴」と「室温」だ。

まず入浴から説明しよう。

具体的には寝る90分前に40℃の湯船に15分浸かる。

実験データによると上記の入浴により深部体温が0.5℃ほど一時的に上がり、そしてそれがもとに戻るのに約90分ほどかかったとされている。

深部体温には位置と上がると上がった分だけ下がろうとする性質があるらしい。

つまりこの深部体温が下がるタイミングと眠るタイミングを合わせることでスムーズに眠りへと落ちていくわけだ。

もし時間がない場合は「足湯」「シャワー」でも効果はあるとされている。

「遅くなったから風呂に入らないでそのまま寝て翌朝入ろう」というのは眠りの面からいっても良くないようだ。

また、眠る際の室内温度、湿度も重要である。

冬に『部屋は寒いけど電気毛布や電気アンカで布団は暖めています』とか『寝間着や寝具にこだわってます』というのは体温のスイッチとしてはあまり良くない。

それよりも室温を快適にするほうがよい、とのことだ。

ただ、具体的な湿度温度については個人差が激しいとして、とくに触れられてはいない。

それぞれ快適と思える温度に近づけるしかなさそうだ。

ポイント4 入眠をパターン化する「脳のスイッチ」

質の良いの眠りのための体温のスイッチがわかったら、次は脳のスイッチだ。

脳が刺激を受けていれば頭が覚醒してしまい、例えベストな体温変化が起きていてもすんなりと眠りにつくことは出来ない。

『人間関係の悩みでもやもやして眠れない・・・』『今日のコンサートは凄かった。興奮さめやらぬ。眠れぬ』『明日の旅行が楽しみすぎ!やばい眠れない!!』

君もこういった経験はきっとあるだろう。いわゆる目が冴えて眠れない、というやつだ。

この本では脳を落ち着かせることですぐに眠りへと落ちていくためのアプローチとして「スイッチ」という言い方をしている。

脳のスイッチは「単調」と「ルーティン」だ。

退屈な映画をみて眠くなる。単純作業で眠くなる。高速道路を運転中に眠くなる。

これらは脳が考えることやめ単純な状態になっていることで起こる現象だ。

すなわち、寝る前の時間はなるべく頭を使わずリラックス出来るような過ごし方をすることが、眠りへのよいアプローチといえる。

筆者の西野氏によると、寝る前のスマホやPCがよくないのは『画面のブルーライトの影響ではなく、操作による脳への刺激』なのだという。


また、毎日の眠りには「いつものパターン」というルーティンがのが役に立つと述べている。

いつもどおりの時間に、いつもどおりのベッドで、いつもどおりのパジャマで、いつもどおり照明と室温で寝る。

このパターン化こそが眠りに入るための条件付けとなる。

眠るまでの流れを毎回同じにすれば、何も考えること無く布団に入り自然と脳が休息に入ろうとするだろう。

中々寝付けない、という人は意識的に眠るまでの行動をルーティン化して続けてみよう。

無意識にそのルーティンをこなせるようになれば、眠りへのスイッチも切り替えやすくなるはず。

ポイント5 睡眠レベルを高めるための「覚醒戦略」

最後は気持ちよく起きるための目覚めに関するテクニックだ。

最初のキーワードは「光」と「体温」だ。

ただ、どちらもスタンフォード式ではサラッと流している。

要約すると「朝は数分でも、そして曇っていてもいいので、必ず太陽の光を浴びよう」「深部体温は睡眠時に下がり覚醒時には上がる。このリズムを崩さないように」

これだけだ。

以降はもう少し具体的な細かい覚醒の為のテクニックをあげている。

  • アラームを2つの時間でセットする。

  • 朝は裸足で行動する。

  • 手を冷たい水で洗う

  • 朝食はしっかり噛んで食べる

  • コーヒーをテイクアウトする

  • 朝は早足のウォーキングを行う

アラームを2つの時間でセットするというのはレム睡眠時に目覚めるためのテクニックだ。

レム睡眠は比較的浅い眠りであるため、覚醒しやすい。

このタイミングで起きることができればすっきりと目覚めるはずだ。

一般的にレム睡眠ノンレム睡眠は90分サイクルと言われているが、西野氏によると実際には個人差があり規則的ではないため必ずしも90分とは限らないそうだ。

したがってレム睡眠がいつ起こるかを予測することはできない。

そこでこの時間差アラームが役に立つ。

具体的には『起きたい時間』と『その20分前の時間』この2つの時間にアラームをセットする。

この時、1度目のアラームは「僅かな音で短く」設定することがポイントだ。

もし1度目のアラームのとき、レム睡眠状態にあればすんなり起きることが出来る。

レム睡眠時は小さな音でも覚醒するからだ。

1度目のアラームに気付かなければノンレム睡眠状態にあると推測される。その場合は2度目のアラームの頃にはレム睡眠に移行しているため、こっちで起きられるはずだ。

普通は起きる時間だけにアラームをかける。

寝過ごさないようにスヌーズ機能がついていたり、一定の手順を踏まないと止まらない目覚まし時計なんかもある。

これらはノンレム睡眠の場合でも容赦なく起こされてしまうので、結果的に『悪い目覚め』となってしまう。

それ以外のテクニック(というほどのものか?)はまあ大体想像がつくだろう。

裸足で過ごしたりや冷たい水で手を洗うことで手足を冷やして「刺激」と「温度調整」を行う。

「朝食をよく噛む」「コーヒーのカフェイン」「ウォーキング」はいずれも脳を刺激して活動モードへと切り替えるためのものだ。

ちなみにテイクアウトなのは『カフェで注文時に会話しさらにそのコーヒーを飲みながら会社で誰かと雑談することで会話刺激が得られるから』らしい。

こういう発想がスタンフォード(てか海外)っぽい。

なおランニングではなくウォーキングなのは汗をかきすぎないため。

汗だくになるまで走ると疲労や発汗による放熱で眠気を呼び、日中のパフォーマンスが落ちるからだ。

実践レポ

以上がスタンフォード式の睡眠メソッドをざっくりとまとめたものだ。

では実際に2017年の8月から9月までの1ヶ月間、この『スタンフォード式 最高の睡眠』に則って睡眠の質を改善した効果について報告するよ。

目覚ましを使わない生活で分かった体が求める睡眠時間

僕の場合、元々4時間半熟睡法にのっとって25:00に寝て5:30に起きるという生活リズムだった。

まずは寝る時間を23:00~23:30位に変更した。これは割とすんなり変更できた。

スタンフォード式の場合「理想の睡眠時間は遺伝子で決まる」とされている。

したがってXX時~XX時までの○○時間寝ましょう!と言うような基準はない。

しいて言えば「できれば23時には寝る」「最低でも睡眠時間を6時間は確保してほしい」位しか書かれていない。

その為、起きる時間に関してはとりあえず最低限会社に間に合うための7:30とした。

家族もいるので誰かしら起きるだろうと予測し、あえて目覚ましはかけなかった。

実際に試してみると大体6:30~7:30位までの幅で自然に目が覚めた。(最初のうちは5:30に目が覚めるかな?とも思ったけど実際には目覚ましがないと絶対に起きれなかった)

それ以前の4時間半睡眠の影響(スタンフォード式にいうと睡眠負債)もあると思われるので、1ヶ月という期間では実験としては少々短いがどうやら僕の場合は7~8時間くらいが適正な睡眠時間なのかもしれない。

もっと続けるとこの幅が狭まっていき、理想の睡眠時間がわかるだろう。

夜間の眠気が無くなった

また、今まで22:00くらいにはよく眠くなっていたがそれも無くなった。

これも十分な睡眠量が確保できていることによる影響なのか。

そう言えばこの本には『普段眠る時間の直前~2時間前位までがもっとも眠りにくい』という研究理論も載っていた。

寝る時間を自然な23:00~23:30頃に戻したことで、その前の時間帯に眠くなることがなくなったのかもしれない。

今までも夜間の眠気のピークは22:00~23:00位で、そこを乗り切れば25:00まですんなり起きていられた。

ちなみに、早く寝るようになった分20:00~21:00頃に眠くなるかというと、そんなこともなかった。

体調面への影響は?

元々別に体調面の不安があったわけでもないので、特に良くなったという点も感じられない。

この本によると睡眠負債を返せばパフォーマンスは上がるとされているが、僕の場合、もし今までの4時間半熟睡法で睡眠負債が溜まっていたとしたらとても1ヶ月で解消できるとは思えないので目に見える効果はまだ現れないだろう。

ただ、少なくとも今までより悪化することはありえないはずだ。

最高の睡眠は得られたのか

この本の要点をまとめてみると、眠りの質を高める為のポイントは「寝る前に適度な体温と室温にする」「寝る前は脳を使わない」の2つに集約される。(と思う)

室温に関してはどちらかというと冬場を想定しているし、夜間はブログを書いたり勉強するための貴重な時間なので脳を使わないことも難しい。

そうなると入浴の時間を気をつけるのと、朝しっかりと覚醒すること位しか実施できる点がない。

(もちろん網羅しきれていないだけで、これ以外の細かいノウハウやテクニックはいくつもある)

そういう意味では100%実践したとは言えず、中立なジャッジができないが、少なくとも朝の目覚めに関しては格段に改善されている。

これは即ち睡眠の質が向上したと言えるのではないだろうか。

長期的に継続することでさらなる改善が見込まれる。

まとめ

以上が『スタンフォード式 最高の睡眠』のメソッドに関する概要と僕が実践したことによる効果だ。

4時間半熟睡法の場合『毎日の自由時間が増える』というはっきりしたメリットがあるが、スタンフォード式の場合は具体的な変化がわかりづらい。(期間が短いこともあるが)

ただ、夜間の眠気改善や目覚めの良さに関してはてきめんに影響が出ていることから『本来の睡眠リズムにより近くなった』あるいは『睡眠の質が少なからず向上した』ことは確かだろう。

「普段ちゃんと寝てるのに疲れがとれない!」とか「忙しくてこれ以上睡眠時間を増やせないが質は確保したい!」という君は一度目を通してほしい一冊だ。

個人的には『黄金の90分』『2段階アラーム』についての記載がこの本の一番の収穫だった。

おまけ

実は今回の紹介ではごっそり省いたが、この本の後半には約40ページに渡って日中の睡魔に対しても『スタンフォード式』の解決策が提示されている。

僕の場合は元々日中の眠気はなかったし、正直言ってさほど有用な情報とも思えなかったけど、普段から昼間眠くて困るという人は読んで見る価値はあるかもしれない。(僕にはなかったけど)

また、細かい部分は端折っているし、僕の解釈による意訳も含まれるのでその点はご注意ください。

おしまい